ヒルマ・アフ・クリント展を通して体験する、内なる旅の記録

Lake view in Hokkaido
Pink sunset by the lake in Hokkaido
Wheat Autumn
Slide 1
Slide 2
Slide 3

ヒルマ・アフ・クリント展を通して体験する、内なる旅の記録

,

先日、ヒルマ・アフ・クリント展を見に東京立近代美術館へ行きました。

とても良かったです!

実は、彼女の制作意図や時代背景のことを全く知らず、SNSで広告が上がってきた時に「行こう」と決めてブックマークしていました。

直感てすごい…と改めて思いました。

ここで簡単にヒルマ・アフ・クリントについてご紹介しますね。

ヒルマ・アフ・クリント

ヒルマ・アフ・クリント(1862–1944)は、スウェーデン生まれの画家であり、抽象絵画の先駆者の一人と言われています。彼女は西洋美術における抽象表現が主流となる以前に、霊的な啓示を受けて独自の抽象作品を制作しました。 幼い頃から数学と植物に親しんだ彼女の作品は、幾何学模様、シンボリズム、鮮やかながらも北欧っぽさのある色使いが特徴です。

人智学で知られるシュタイナーや、ブラヴァツキー夫人の神知学からも影響を受けました。シュタイナーには会いに行ったり、手紙のやりとりもしていたようです。

「抽象絵画の先駆者の一人」と言われるようになったのは、本当につい最近のことで、生前は、本の挿絵や肖像画などで商業的作家としての活躍を感じさせるような部分も展示にはありましたが、彼女の真骨頂である抽象絵画では全く成功していなかったというか、そもそも「商業的成功を視野に入れて制作していなかったのでは?」というのが、作品から伝わってきた感じです。

ヒルマアフクリント展の様子

ある情報によれば、年下の妹が若くして亡くなったことをきっかけに、心霊主義に興味を持ったということですが、ヒルマ・アフ・クリントが生まれた19世紀の終わりから20世紀の始まりにかけては、それまで目で見えなかったものが見えてきた時代。欧米では、ロンドンで1851年に、パリでは1855年にパリで国際博覧会(万国博覧会)が開かれ、科学技術の分野で目覚ましい発展がもてはやされた時代で、人々が目に見える世界の向こう(beyond)に興味津々だったと思われます。

ヒルマ・アフ・クリントの内なる旅を通して見えてくるもの

見えない世界への思いが強まった時代の流れは、 ヨーロッパではイギリスを中心に交霊会が1850年代にブームを引き起こしました。ヒルマ・アフ・クリントも共鳴した他の女性アーティストたちと、交霊会を通して降りてきたインスピレーションを表現し始めました。神殿を作り、そこへ収納することも考えていたというヒルマ・アフ・クリントの作品を見ていると、商業的に流通させよう!とか、新しい表現の体現者になろう!とかいった意図よりも、高次の世界からのメッセージを表現しなければならないという使命感を感じていたのではないか…とも思えました。

この展覧会の目玉は、10枚の大型作品を設置した展示です。そこは正方形の回廊のようになっていて、中心の壁に沿って作品が並べられており、その周りをぐるぐる歩きながら、幼年期→青年期→成人期→老年期へと移り変わっていく作品を見ました。これらの作品は紙の上にテンペラで描かれていて文字通り、大作でした。

私は一枚目の写真、手前にある紺地の画面に花を彷彿とさせるモチーフが描かれた絵で始まる「幼年期」か一番好きでした。なんか、自然の奏でるシンフォニーみたいなのが聞こえてくるようでした!

ここからヒルマ・アフ・クリントは、より一層内なる旅に向かっていったように見えました。

この3つの絵画には、いろんな象徴が盛り込まれているような気がします。◯や△、▽そしてスパイラル…。例えば、右端の絵画の赤い部分は炎のようになっていて、火(男性性)と▽(水、女性性)が調和してバランスが取れている状態を表しているのかなと思えたり…。

最近、こう言った象徴について拾い読みをしながら、さまざまな見方を発見中です。最近は蛇について興味深い考察を読みました。これについてははてブロに書きましたので、よかったらそちらもご覧ください。

一方その頃…様々な内なる旅の記録

さて、一方その頃パリのアートシーンでは…ピカソが薔薇の時代からキュービズムへと転換を遂げようとしていました。アビニョンの娘たちは1907年の作品です。才能はもちろん、カリスマも野心もスタミナもあったピカソの内なる旅と、ヒルマ・アフ・クリントの内なる旅はまた違います。

そして日本では…明治時代の中ごろ、1906年(明治39年)、日露戦争が終わり、日本社会党が結成された年でした。時期は少し早いですが、黒田清輝『智・感・情』や藤島武二『天平の面影』に見られるように、伝統美術を保ちつつ、西洋の技法を積極的に取り入れた「和洋折衷」の表現が模索されていたことが伝わる作品が残されています。ここにもまた異なる内なる旅がありそうです。

そんな時代を生きた1人の女性、アーティスト、ヒルマ・アフ・クリントをフィーチャーした「The Beyond」はとても見応えがあり、極めて個人的な内なる旅の記録に触れさせてもらえるのはありがたいです。「死後20年間は作品を公開しないこと」と遺言していたヒルマ・アフ・クリントの気持ちを思うと気が引けるものの、こうやってたくさんの目に触れることをどこか願ってくれていたのかなとも思いました。

東京国立近代美術館で6月15日まで開催中です。

avatar

Kaeko

中川 佳英子
Emotion Code®, Body Code®, Access Bars® 認定プラクティショナー
👉個人セッションのお申し込みはこちらから
外部セラピスト(サノビブメディカルインスティチュート)

大阪生まれ。人生の半分をイギリスで過ごし、現在は東京を拠点に活動中。
好きなこと 旅行、アート(やるのも見るのも)、語学を勉強すること、散歩、読書、自然。

2024〜 10年来の友人であり、心理学者のフェルナンド・エストレーリャとポッドキャストHoshirioの配信を始める。合わせて日本語解説動画をメインに展開する自身のチャンネルKaeko Nakagawa 愛される私になるエネルギーヒーリングもスタート。もっと読む